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インフルエンザについて 2004/11/21

Q1:インフルエンザと普通のかぜは違うのですか?
 普通のかぜとインフルエンザを混同してはいませんか。普通のかぜの症状は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳(せき)などが中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはほとんどありません。

 一方、インフルエンザの場合は38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの痛み、鼻汁などの症状も見られます。さらに、気管支炎、肺炎、小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのもインフルエンザの特徴です。

 高齢者や、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ人は重症化することが多いので、十分注意する必要があります。最悪の場合は死に至ることもあります。近年、小児がインフルエンザにかかると、まれに急性脳症を起こして死亡するといった問題も指摘されています。

 また、インフルエンザは基本的に流行性疾患で、我が国では例年11月〜4月に流行しますが、一旦流行が始まると、短期間に乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込むという点や、インフルエンザが流行した年には、高齢者の冬季の死亡率が普段の年より高くなるという点からも、普通のかぜとは異なります。





Q2:インフルエンザにはどんな種類がありますか?
 インフルエンザには原因となっているウイルスの抗原性の違いから、A型、B型、C型に大きく分類されます。A型はさらに、ウイルスの表面にある赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、2つの糖蛋白の抗原性の違いにより亜型に分類されます。いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのは、この亜型のことです。歴史的にA型が大きな流行を起していますが、B型もヒトに感染し流行を起こします。C型もヒトに感染しますが、大きな流行は起こさないとされています。現在、ヒトの世界で広く流行しているのは、A/ソ連型ウイルス(H1N1亜型)、A/香港型ウイルス(H3N2亜型)、B型ウイルスの3種類ですが、症状や治療、予防法には大きな違いはありません(治療薬は型により異なることがありますので、医療従事者向けQ4〜Q5を参照してください)。インフルエンザの発症を防げるかどうかは、それぞれの人のからだがそれぞれのウイルスの種類に対して、防御のための抗体を持っているかどうかが鍵(かぎ)を握っています。

 また、このように抗原性の違う2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザのウイルスが、同じシーズンの中で複数流行することが多いので、A型インフルエンザにかかったあとB型インフルエンザにかかったりすることがおこります。


Q3:インフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか?
 予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることで、これは欧米では一般的な方法になりつつあります。わが国でも年々わずかながらワクチンを受ける方の割合が増えてきています。また、インフルエンザにかかった場合に重症化する可能性の高い人は特に、ワクチンの接種は重症化防止の方法としても有効です。インフルエンザは、インフルエンザにかかった人の咳(せき)、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによって感染します(飛沫感染)。インフルエンザが流行してきたら、人混みは避けましょう。特に高齢者や慢性疾患を持っている人や、疲れていたり、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。

 空気が乾燥すると、咽頭粘膜の防御機能が低下して、インフルエンザにかかりやすくなります。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使って適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。常日ごろからバランスよく栄養をとることも大切です。帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せておすすめします。また、インフルエンザにかかって、咳(せき)などの症状のある方は特に、周りの方へうつさないために、マスクの着用が勧められます。


Q4:インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか?
 どの病気でも共通して言えることですが、早めに治療し、体を休めることは、自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも大変重要なことです。一般的には以下のような点に注意しましょう。

単なるかぜだと軽く考えずに、早めに医療機関を受診して治療を受けましょう。
安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。
 最近、インフルエンザウイルス治療薬としての抗ウイルス薬も、医療機関で診察の上使用できるようになりました。また、インフルエンザにかかったことにより、他の細菌にも感染しやすくなりますが、このような細菌の感染による肺炎や気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生剤(抗菌薬)が使用されます。これらの薬の効果については、インフルエンザの症状が出はじめてからの時間や、体の状態により異なります。それぞれの薬には、正しい飲み方、飲んでは行けない方、副作用などがありますので、医療機関できちんと説明を受けてください。また、使用する、しないは医師の判断となりますので、十分に医師に相談することが重要です。

 なお、いわゆる「かぜ薬」と言われるものは、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状をやわらげることはできますが、インフルエンザウイルスや細菌に直接効くものではありません。

Q5:インフルエンザにかかったとき、解熱剤は使ってもよいのですか?
 解熱剤には多くの種類があります。その中で、インフルエンザに罹っているときには使用を避けなければならないものがあります。代表的なものが、アスピリンなどのサリチル酸解熱鎮痛薬、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸です。別の人に処方された薬はもちろん、当人であっても別の受診時に処方されて使い残したものを使用することは避けるべきですし、市販の解熱鎮痛薬の一部にはアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛成分を含んだものもありますので、自己判断せず、使用時にはかかりつけの医師によく相談してください。


Q6:インフルエンザにかかったら学校や職場に行かない方がよいのですか?
 一般的にインフルエンザウイルスに感染して、症状がでてから3〜5日間にウイルスを排出すると言われています。健康な成人では、インフルエンザは通常2〜3日で熱が下がりますので、熱が下がっても一両日はうつす可能性が残ることになります。この期間には他のひとへうつす可能性が高いので、人の多く集まるところは避けた方が良いでしょう。学校や職場に行く場合はマスクをするなど、周囲の人へうつさないように配慮してください。インフルエンザ薬の内服によってこの期間は、1〜2日間短縮されます。

 学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としておりますが、「ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときは、この限りではない」となっており、医師の裁量が認められております。また、職場復帰の目安については決まったものがありません。

 インフルエンザ罹患後には体力等の低下もありますので、以上のような点を考慮の上、いずれの場合も無理をせず、十分に体力が回復してから復帰するのがよいと考えられます。


Q7:インフルエンザにかかった人の部屋や衣類はどのようにしたらよいでしょうか?
 インフルエンザにかかった人が部屋の中にいた場合、その人の咳やくしゃみ(飛沫)の中にインフルエンザウイルスがいる可能性がありますが、飛沫というのは1〜2メートル以上は飛びませんし、マスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えることができます。また、手や指先を介した感染もありますので、手洗いは重要です。狭くて喚起の悪い部屋などでは、比較的長くウイルスが浮遊することもありますので、時々換気をすることや、部屋の湿度を適度に保つことなどが大切です。インフルエンザウイルスはほとんどの消毒薬に弱いので、目に見えるような、痰やくしゃみで飛んだ分泌物などによる汚れがある場合には、通常の消毒薬により消毒しておくほうがよいでしょう。しかし、十分な湿度があれば生存期間も短いので、通常の掃除だけで十分だと考えられます。

 インフルエンザにかかっている時に着用した衣服には、ウイルスが付着していることが予想されますが、これから感染を起こすことはまれだと考えられています。通常の洗濯をして日なたに干しておけばウイルスの感染性はなくなってしまいます。 

Q8:今年流行するインフルエンザは何ですか?
 最近は毎年、A/ソ連型とA/香港型の2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザの3種類の型のウイルスが、一緒に流行してきました。2002/2003シーズンは、A/香港型とビクトリア株系統のB型が11月終わり頃からほぼ同時に流行し始め、A型が1月の後半に、B型が1月末から3月にまで至る幅の広い流行のピークがみられました。

 インフルエンザは、ヒトの免疫のシステムを逃れて生きのびるために、抗原性の変異を繰り返すので、正確にどの株が流行するかを予測することはとても難しいとされていますが、患者分離株の分析と、南半球での流行状況も考慮して、2003/2004シーズンは昨シーズンと同じ種類の株が流行する可能性が高いと判断され、今年のワクチンには、A/ソ連型(H1N1)のニューカレドニア株、A/香港型(H3N2)のパナマ株(シドニー株に対応できる)、B型の山東株(ビクトリア株に対応できる)を混合したものが用意されました。

 全国の流行や検出の現状は、地域の感染症情報センター、保健所や国立感染症研究所のホームページで知ることができます。

○国立感染症研究所感染症情報センターホームページ:
 http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

○地方衛生研究所・保健所ホームページへのリンク:
 http://idsc.nih.go.jp/others/phc.html


Q9:新型インフルエンザが現れるとどうなるのでしょうか?
 インフルエンザの流行の歴史をみると、かつてのスペインかぜ(A/H1N1亜型)が現れたときは、大規模な流行と甚大な数の死者を出しました。新型インフルエンザが流行した場合、これに対して免疫を持っている人はいませんし、また事前に接種された予防接種の効果は余り期待できないため、かなりの数の罹患者と死亡者がでることが予想されます。アメリカでは8〜20万人の死者が出ると予測されており、わが国では3〜4万人の死者が出ることが懸念されます。

 1997年に香港で発生した、新型インフルエンザ(A/H5N1亜型)ウイルスによる患者報告では、入院加療を受けた18症例中6例が肺炎の合併などにより死亡し、香港政府は1997年12月末、140万羽のニワトリを殺処分しました。このときは、ウイルスはヒトからヒトに感染したものではなく、恐らく感染しているニワトリからヒトに感染したものと考えられました(IASR Vol 18,No 9 http://idsc.nih.go.jp/iasr/18/211/dj2111.html)。しかし、2003年にも、中国南部へ旅行した家族の感染が報告されており、ヒトからヒトへの感染が疑われています(IASR Vol 24,No3 http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/277/fr2771.html)。これ以外にも、2003年2月にはオランダで、やはりトリ型インフルエンザウイルス(A/H7N7)がヒトへ感染したことが報告され、家庭内でのヒトからヒトへの感染も確認されています(IASR Vol 24,No 6 http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/280/fr2801.html)。

 これらのウイルスがこのまま姿を消してしまうのか、あるいは再び勢いを盛り返して流行するかはだれにも予測がつきませんし、どのようにしてトリのウイルスが直接ヒトへ感染を起こしたのかもわかっていませんので、監視の体制を強化していくことが必要です。 

 厚生労働省では、現在、新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会を開催して、対策を検討しています。

 なお、鳥インフルエンザに関しては、別に「鳥インフルエンザに関する情報」を設けていますので、そちらを参照ください。


Q10:インフルエンザワクチンは国によって違うのでしょうか?
 インフルエンザワクチンに使うウイルスの株は、世界中のほとんどの国でWHOが2月中旬に出している「北半球次シーズンに対するワクチン推奨株」に基づいて、決めています。各国がそれぞれの国とその周囲の国の状況を総合的に判断してWHOの意見を参考に決定しているため、多少の違いはあっても、ワクチン株が国によってまったく異なるということはこれまでほとんどありませんでした。また、毎年のインフルエンザシーズンで、国ごとに主に流行するインフルエンザウイルスの型(A/ソ連型、A/香港型、B型)が異なることはありますが、主に流行した3つの型が、国ごとに大きく異なっていたこともほとんどありませんでした。つまり、たとえば日本で接種したワクチンも、中国で流行しているインフルエンザに効果がありますし、逆に中国で接種したワクチンも、日本で流行中のインフルエンザに対して効果があることになります。ただし、ワクチンの製造方法や添加物などは国によって若干の違いがあるため、接種によって得られる免疫力や副反応の頻度には差があります。


Q11:今年のインフルエンザシーズンにSARS(重症急性呼吸器症候群)が再び流行するという噂は本当ですか?
 結論から言えば、これは世界中のだれにもわかりません。再び発生すると危惧されている理由は幾つかあります。例えば、SARSコロナウイルスはもともと野生動物がもっていて、それがヒトに感染したと考えられるため、再び同様のことがおこらないとは限らないことや、既知のコロナウイルスはインフルエンザと同じ冬季に流行することが知られていることから、冬になると流行する可能性を否定できないこと、また、前回の世界的な集団発生が冬季に始まっていること、SARSコロナウイルスが低温に強いことが実験で示されていることなどがあげられています。(「SARS研究のコンセンサス」参照:http://www.who.int/csr/sars/en/WHOconsensus.pdf


Q12:SARSとインフルエンザはどう違うのですか?
 SARSはSARSコロナウイルス、インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、それぞれまったく違うウイルスによるものですが、初期の症状は、突然の高熱、筋肉痛、全身のだるさなど極めてよく似ており、症状だけからでは区別はつきません。また、インフルエンザは感染してから1〜3日で症状が出てきますが、SARSは感染してから発症するまで(潜伏期)に2〜10日かかります。同じような症状の人と接触した時期を思い出してください。インフルエンザは通常1週間前後で治りますが、SARSの場合には発熱が持続し、熱が出初めてから2週目頃から呼吸器症状が強くなり、10〜20%の人では人工呼吸器が必要なほど重症化します。しかしながら、インフルエンザであっても重症になれば肺炎を起こしますし、SARSも軽症であれば、1週間程度で治りますので、やはり単純に症状だけで区別することはできません。したがってSARSが疑われるときには、実際にSARS患者と濃厚な接触をしたか、介護したか、同居したか、あるいはその体液に接触したかなどの情報が重要となります。両者を見分けるためには、医療機関において各種検査を行いその結果などから総合的に判断することが必要です。(「SARS症例定義」参照: http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update99cdc.html

 また、インフルエンザは症状が出てすぐの時期に感染力が最も強いことが知られていますが、SARSは症状が出た翌週の肺炎期に最も感染力が強くなるとされていますので、経過をよく観察して、早めに医療機関を受診しましょう。


Q13:今年の冬はSARSも考えて、いままでとは違った用心が必要ですか?
 平成15年10月末現在では、世界にSARSの感染が確認されている地域はありませんので、神経質になる必要はありません。つまり、以前にSARSの感染が確認された地域から帰国しただけでは、SARSを積極的に疑う根拠にはなりません。

 毎年冬季にはインフルエンザが流行して高い熱に悩まされる人はたくさんいますが、もしも再びSARSの発生があった場合には、これらの急に発熱する疾患はすべてSARSに感染しているかどうか心配する原因に十分なり得ますので、インフルエンザのワクチン接種などをしておくとともに、体調の維持に心がけ、外出から帰ったらうがいと手洗いを励行するなどの、基本的な予防法を実行することが重要です。

 インフルエンザワクチンは個人防御のために行うもので、外国へ出張予定者も、インフルエンザウイルスに感染した際に発症や重症化を防ぐためには、インフルエンザワクチンの接種は効果があります。特に今冬は、WHOをはじめ世界各国が医療従事者へのインフルエンザワクチンの接種を推奨しているように、SARSの再発生があった場合に、SARSと混同される可能性のあるすべての発熱性疾患にかかる人の数を出来るだけ減らし、混乱を回避しようという意図から取られている対策です。したがってWHOの分類で、よりSARSの再発生の危険性が高いところに分類されている国に行く場合には、「混乱を避ける」意味でもインフルエンザワクチンの接種を受けておくことに意義があると考えられます。

 また、このような自分を守るための心配りとともに、咳などの症状があれば、周囲の人に感染させないように、咳(せき)をするときにはハンカチやティッシュなどで口元を覆うとか、あるいはマスクをするなどの気配りで、周囲の人たちも感染から守るという姿勢が非常に重要です。特に、医療機関を受診する際には、必ずマスクを着用してください。

 旅行などの際には、渡航先国や、訪問先と目的など、状況ごとに判断をする必要がありますので、常に最新の情報を入手するようにしてください。 

国立感染症研究所のホームページに、WHOの勧告が掲載されています。

参考:

「今冬のSARS」
 http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/sars.html

「2003-04シーズンのインフルエンザ予防接種:SARSへの配慮を含めた提言」
 http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/sars.html




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