内科トップ内科ニュース
一覧へ戻る

インフルエンザワクチンについて(その1) 2004/11/18

Q1:インフルエンザワクチンの接種は効果がありますか?
 インフルエンザワクチンの接種を行うことで、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を低く抑えることが期待できます。このワクチンの効果は、年齢、本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチンに含まれている株の合致状況に寄っても変わりますが、ワクチンの接種を受けないでインフルエンザにかかった65歳以上の健常な高齢者について、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。特に65歳以上の方や60歳から64歳で基礎疾患を有する方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)など)では、インフルエンザが重症化しやすいので、かかりつけの医師とよく相談のうえ、接種を受けられることをお勧めします。

 WHOが推奨したウイルス株を基本にして、我が国の流行状況や流行前の健康な人が持っている免疫の状況などから予測して作られた我が国のインフルエンザワクチンは、この約10年間、予測したウイルスと流行したウイルスの株はほぼ一致しており、有効なワクチンが作られています。現在のインフルエンザワクチンには、A型2種類およびB型1種類が含まれており、A/ソ連(H1N1)、A/香港(H3N2)、B型のいずれの型にも効果があります。また、ワクチン接種による免疫の防御に有効なレベルの持続期間はおよそ5ヵ月となっていますので、毎年流行シーズンの前に接種することをお勧めします。

 なお、当然のことですが、インフルエンザのワクチン接種ではSARSはもちろん、他のかぜウイルスによる「かぜ」(かぜ症候群)にも効果はありません。


Q2:インフルエンザのワクチンはいつごろ接種するのが効果的でしょうか?
 インフルエンザに対するワクチンは、個人差はありますが、その効果が現れるまでに通常約2週間程度かかり、約5ヶ月間その効果が持続するとされています。多少地域差はありますが、我が国のインフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心になりますので、12月上旬までには接種をすまされることをお勧めします。

 2回接種の場合は、2回目は1回目から1〜4週間あけて接種しますので、1回目をさらに早めに接種しましょう。最も免疫を獲得する効果が高いのは、1回目の接種と2回目の接種間隔がおよそ4週間の場合とされていますが、体調不良などで1回目と2回目の期間が4週間以上あいたとしても、ワクチン接種の効果はありますので1回目からやり直す必要はありません。2回接種が必要な方は接種が可能になった時点で2回目の接種を受けておきましょう。また、逆に流行が始まっていて、2回接種を急いで行う必要がある場合には、不活化ワクチンですので、1週間以上あいていれば2回目の接種が可能です。

 インフルエンザの流行には地域性がありますので、全国的なインフルエンザの流行が始まっていても、地域によってはまだ流行していない場合もありますし、その逆に、全国に先駆けて流行する場合もあります。インフルエンザワクチンは接種してから免疫が出来るまでに約2週間かかることを考慮して、お住まいの地域で流行がピークになるまでに間に合うか間に合わないかを、地域の流行の状況をよく見て判断し、かかりつけの医師とご相談して接種をしてください。なお、インフルエンザは1シーズンに2種類以上の型が流行することがありますので、今流行している型には間に合わなくても、その後別の型が流行する場合はその型の予防を期待して接種をしておくのもよいと考えられます。 


Q3:インフルエンザワクチンの接種はできますか?
 当院で可能です。予約は必要ありませんが、ワクチンの有無について直接問い合わせて確認していただくようお願いします。


Q4: インフルエンザワクチンを接種した方がよいのはどのような人でしょうか?
 通常インフルエンザに罹患した場合は、罹患したインフルエンザの型に対する免疫(抗体)ができ、半年から1年、あるいは1年以上続く場合もあると思われます。これに対して、ワクチン接種によって獲得した免疫は、持続期間がおよそ5ヵ月と短くなります。いずれの場合も、シーズンごとに免疫力を高めておく必要があるので、毎年シーズン前のワクチン接種が必要となります。

 重症化と死亡の報告が多い65歳以上の高齢者の方と、60歳から64歳で基礎疾患がある方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)など)は、ワクチンの接種を受けておくことが勧められます。また、欧米では6ヵ月から24ヵ月未満の乳幼児も重症化しやすいことが報告されており、ワクチン接種による予防が望ましいと考えられています。

 また、これらの方と接する機会が多い方や就学児童も、「インフルエンザをうつさない」という観点から予防しておく方が望ましいと考えます。 


Q5:インフルエンザのワクチン接種を受けることが適当でない人や受けるときに注意が必要な人はありますか?
1) ワクチン接種には不適当と考えられる方は予防接種法には以下のように示されています。
<予防接種実施規則第6条による接種不適当者(抜粋)> (1) 明らかな発熱*を呈している者
(2) 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
(3) 当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことが明らかな者
(4) その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
  *:通常は、37.5度を超える場合をいいます。



 また、既往などから、接種の判断を行うに際して注意を必要とする方(接種要注意者)がおられますが、この方々は接種禁忌者ではありません。ただし、医師と相談の上、健康状態及び体質を勘案して接種の可否を判断し、接種を受ける際には、改めて十分に効果や副反応などについて説明を受け、十分に理解した上で接種を受けるようにしましょう。

 
2) インフルエンザワクチン接種の適応に関しては、年齢の下限はありませんが、通常生後6ヶ月未満の乳児にはワクチンを接種しません。
 
3) インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンと言う種類で、胎児に影響を与えるとは考えられていないため、妊婦は接種不適当者には含まれていません。しかし、妊婦又は妊娠している可能性の高い女性に対するインフルエンザワクチン接種に関しての、国内での調査成績がまだ十分に集積されていないので、現段階ではワクチンによって得られる利益が、不明の危険性を上回るという認識が得られた場合にワクチンを接種するとされています。また、妊娠初期はいろいろな理由で流産する可能性の高い時期なので、一般的に予防接種は避けた方がよいと考えられていますが、インフルエンザワクチンを接種しても胎児に異常の出る確率が高くなったというデータも無いことから、予防接種直後に妊娠が判明しても人工妊娠中絶をする必要はないと考えられています。主治医によく相談をして判断してください。
 
4) 熱性けいれんの既往がある方に対するワクチンの接種に関しては、予防接種ガイドライン(2003年発行:(財)予防接種リサーチセンター、監修 厚生労働省結核感染症課)に次のように記載されています。

「単純性熱性けいれんと診断がついた小児には、一般児と同様に接種する。ただし、発熱時の対応については、解熱剤、抗けいれん剤の使用等、事前に十分指導をしておく必要がある」


 つまり接種は可能ですが、けいれん発作でも、てんかんによる場合には取り扱いが変わってきますので、かかりつけの小児神経専門の医師とよく相談して接種を受けるかどうかを決めることが大切です。このようなお子さんにワクチンを接種する際には、流行が始まる前に接種をすませておかれることをお勧めいたします。

 
5) てんかんの既往がある方に対しては、発熱で容易に痙攣重積発作を起こす場合もあるので、てんかんを治療している主治医あるいはその依頼に基づき、事例ごとに検討して、ワクチンを接種するか、しないかを決めるのが望ましいと考えられます。



Q6:卵やゼラチンにアレルギーのある人もインフルエンザの予防接種ができますか?
 卵アレルギーの程度にもよりますが、ほとんどの場合問題なく接種できます。ワクチンの製造過程に発育鶏卵を使うために、ごくわずかながら鶏卵由来成分が残って、それによるアレルギー症状がまれに起こることもありえます。しかし、近年は高度に精製されてワクチンにはほとんど残っていませんので、通常は卵アレルギーがあっても問題にはなりません。

 しかし、重篤な卵アレルギーのある方、例えば鶏卵を食べてひどい蕁麻疹(じんましん)や発疹を生じたり、口の中がしびれたりする方や、卵成分でアナフィラキシーショックを起こしたことがある方は、ワクチン接種を避けるか、インフルエンザにかかるリスクとワクチン接種に伴う副反応のリスクとを考慮して、接種前にかかりつけの医師とよく相談のうえ、十分に注意して接種することを勧めます。

 また、ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が報告されていましたが、現在、インフルエンザワクチンを生産している4社からの製品にはいずれも、ゼラチンはふくまれていません。 


Q7:授乳中にインフルエンザワクチンを接種しても大丈夫ですか?
 授乳婦はインフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスは病原性を無くしてありますので、体内で増えることもありませんし、母乳を通してお子さんに影響を与えることもありません。また、母親がワクチンを接種したことによって、乳児に直接のインフルエンザ感染の予防効果を期待することはできません。また同様に、ワクチン接種による精子への影響もありませんので、妊娠を希望しているカップルの男性の接種に問題はありません。

 授乳期間中にインフルエンザウイルスに感染した場合も、このウイルスは血液中に存在することは極めてまれで、存在した場合でも非常にわずかであると言われています。したがって、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられます。

(参考)
 授乳をするときには、乳児との距離が非常に近くなるため、母親の咳(せき)やくしゃみの飛沫を、お子さんが大量に受けることになります。そのため、個人差はありますが、インフルエンザ発症後3〜5日間の大量にウイルスを排出すると言われている期間は、直接母乳を与えることは避けた方が良いでしょう。なお、抗インフルエンザ薬を使用した場合は、薬剤が母乳中に移行すると言われており投与中の授乳はできません。


Q8:はしかや、水ぼうそうにかかっていたり、定期予防接種の時期と重なった場合にはどうすればよいですか?
 はしか(麻疹)や水ぼうそう(水痘)などに感染してしまった場合には、一般的には完全に治ってから4週間はインフルエンザのワクチンの接種をひかえた方がよいとされています。これらの疾患に罹患すると、免疫能が低下していることがあるため、ワクチン接種の効果を得るために期間をあける必要があります。

 小児の定期予防接種と日程が重なった場合は、基本的には定期の予防接種を優先しますが、地域でのその疾患の流行状況やインフルエンザの流行の状況からインフルエンザワクチンの接種を優先する場合もありますので、かかりつけの医師と十分ご相談のうえ判断して下さい。

 定期予防接種のうち生ワクチン(ポリオ、麻疹、風疹、BCG)であれば4週間以上、不活化ワクチンやトキソイドワクチン(DPT、DT、日本脳炎)であれば1週間以上間隔をおけば、インフルエンザワクチンは接種可能となります。

 またインフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、接種後は1週以上間隔をおけば他のワクチン(生ワクチン、不活化ワクチンとも)接種が可能となります。


Q9:インフルエンザのワクチン接種は何回受ければよいのでしょうか?
 現在、日本で行われているインフルエンザのワクチン接種に使用するインフルエンザHAワクチンについては、平成12年7月から薬事法上の用法・用量が以下のようになりました。

年齢群 接種用量・方法 接種間隔・回数
13歳以上 0.5mlを皮下 1回又はおよそ1〜4週間の間隔をおいて2回接種
6歳〜13歳未満 0.3mlを皮下 およそ1〜4週間の間隔をおいて2回
1歳〜6歳未満 0.2mlを皮下 およそ1〜4週間の間隔をおいて2回
1歳未満 0.1mlを皮下 およそ1〜4週間の間隔をおいて2回


 また、65歳以上の高齢者に対しては1回の接種でも効果があり、2回接種による免疫の強化に関する効果についての評価は定まっていませんので、現在は1回接種が推奨されています。これは、厚生科学研究費による研究「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷 齊(ひとし)(国立療養所三重病院))」において、高齢者(65歳以上)に対するインフルエンザワクチン1回接種法による有効性の評価を行った結果、接種を行った後の抗体価の上昇は良好であり、重症化は十分に阻止する事が可能であったという報告に基づいています。また、これらの高齢者に接種した際の重篤な全身反応はなく、局所反応も軽微でした。

 なお、予防接種法により、「65歳以上の方」、「60歳から64歳までの方で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方、又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方」については、年1回、予防接種法による定期接種を受けることができます。

 13歳以上64歳以下の方でも、近年確実にインフルエンザに罹患していたり、昨年インフルエンザの予防接種を受けている方は、1回接種でも追加免疫による十分な効果が得られると考えられます。2回接種をしたほうがより抗体価は上昇するという報告もあり、接種回数が1回か2回かの最終的判断は、被接種者の意志と接種する医師の判断によりますので、接種の際には最近インフルエンザにかかったことがあるかどうか、最近ワクチン接種を受けたことがあるかどうかとその時期、そして現在の体調などを担当医師に十分伝え、よく相談して下さい。





一覧へ戻る
Copyright(c)2003 Inomoto